山田和義の数珠の話

山田和義数珠の話(24)琥珀(こはく)②

 前回は琥珀の歴史や造山帯で琥珀ができること、琥珀が樹脂の化石であることを説明いたしましたが、琥珀はその人気からフェイク(偽物)が多いことに注意しないといけません。

 琥珀は化石であるが故に産出した段階でもろいものがあり、これを樹脂コーティングした琥珀があります。山田念珠堂で「虎琥珀」の名称を付けているものは樹脂コーティングした再生品です。

 琥珀のフェイク製品としてはアンブロイドがあります。琥珀の小片や屑・粉を高温で熱して加工したものです。粉とは琥珀を加工する時に出るもので、樹脂化石である琥珀はおよそ150度の熱で柔らかくなり、300度で溶解しますので、熱加工しやすい素材なのです。このアンブロイドは琥珀を原料としていますので、全くのフェイクではありませんが、天然の琥珀ではありません。

 この屑や粉を利用するという手法は珊瑚のところでも説明しました。磯華珊瑚と呼ばれるまるでスポンジのような珊瑚に、珊瑚を研磨した時に出る粉末を樹脂と共に埋めてコーティングすると、鮮やかな色の珊瑚ができます。

 琥珀は元々樹脂ですので、「琥珀色」の樹脂製フェイク(偽物)を作りやすいこともあります。

 本物の琥珀のうち、超高級品に「老珀」があります。
 琥珀は前回も書きました通り、松柏の樹脂が化石となったものですが、化石となる過程で熱が加わると水分が蒸発し、透明度がなくなります。透明度がなくなると乳白化します。乳色化した「乳琥珀」はだいたい淡黄色で貴重なものです。乳琥珀のさらに化石化が進んだ高級品が老珀で、老珀は超がつくほどの高級品です。

「煌琥珀」は松柏の樹脂が高温・高圧の下で重合する過程で、ヒビが入ったり空気が破裂した跡が内包物として残ったものです。煌琥珀の煌は「きらめき」の意味で、光が透過するときらきらした反射があります。ちなみに、無傷の琥珀の方が価値がありますが、好みで煌琥珀を好まれる方もいます。

 琥珀は英名でアンバー(Amber)と呼びますが、「グリーン・アンバー」はその名前の通り、透明な緑色の琥珀で希少性の高いものです。焦げてなく最初の樹脂そのものの色をしていますので珍しく、それゆえ中の内包物が残る可能性が高いのです。16ミリを超える大きい琥珀は値段が付かない程貴重です。偽物も多いでが・・・、そのグリーン琥珀の中に「虫・植物」があると原型のままで『ジェラシックパーク』の物語に成ります。

「ブルー・アンバー」は文字通り青色の琥珀では有りません。赤や黄色、茶褐色、ゴールド色などのバリエーションがありますが、紫外線により反応し青く光るのでブルーアンバーと呼ばれています。太陽光の紫外線でも光りますが暗室のブラックライトを照射すると青色が浮かび上がってくる、これもまた大変希少な琥珀です。産地も色々あり、その地名とともにドミニカブルーアンバーとか 〇〇ブルーアンバーとして販売されています。

 琥珀はこの様に何万年もかけて精錬された宝石ですので貴重なのは当然のことです。しかし 現在の業界には多くの「偽物」が出回っています。何万年もかけてできた宝石がそんなに安価なはずが有りません。「出物だから安い」ということはありえません。考えられないような安価な琥珀を目の前にすると「うちだけの特別なルート」と勘違いされる方も多いのですが、あなただけの特別なルートはありません。御仕入れされる折は常識に基づいてお考え頂きたいと存じます。

 弊社に鑑定で持ち込まれる実に70%以上が偽物ないしアンブロイドです。その中には着色した琥珀も有ります。アンブロイドとは前述した通り、琥珀を原料に樹脂を混ぜて加工された加工琥珀の事で、主産地はロシアと中国で価値はありません。

 尚、本琥珀は海水に浮かびますので、琥珀産地のバルト海沿岸では海底に爆薬を掛けて爆発させ浮いてきた琥珀を採集すると聞いたことがあります。琥珀が海水に浮かぶのは比重が海水よりも軽いからです。ですので、お手元で作られた飽和塩水に琥珀を入れると本物かどうかの判別が出来ます。本物であれば浮かびます。

 ただし最近では比重の軽い偽物も出ていますし、巧妙な手口を駆使し、あの手この手で沈香や伽羅、翡翠の如く商材が高額に成ればなる程 偽物に溢れた琥珀市場と成っています。

 何れに致しましても高額に取引される物品は偽物対策として勉強が必要です。下手に手を出すと大変な事に成りかねません。信頼できる仕入先、信頼できる工場をお確かめに成って、お取引されることをお勧めします。