山田和義の数珠の話
今回で13回目の投稿に成ります。結論をまとめますと、1回目から前回までは、念珠製造のエッセンスをお話させて頂きました。内容は大きく分けて、第一章「珠加工」「玉を通す糸」、第二章「房加工」 第三章「仕立加工」です。
第一章は念珠の珠加工に関することで、その1丁目1番地として重点を置いたのが加工方法です。玉の加工は(1)玉を削り出す (2)珠用に球形にする (3)穴はシッカリと糸を通すための大きさにする (4)形の整った珠に磨きをかけ (5)更に珠の穴を磨く(糸切れを防ぐ) という工程に分かれます。
その珠を連ねる糸について言えば、念珠用の糸は、縦にも横にも捻じれにも耐える強度が必要です。強度だけではなく水にも強く、弾力性にも富んでいなくてはなりません。弊社ではウーリーナイロン(ストッキング用の糸)を撚り合わせ、染色したものを使用しており、糸が切れにくい念珠を制作しています。
弊社の「ディフュージョン商品群」は、穴あけ&磨きが従前通り仕上がっていない商品であり、研磨作業が不十分の為(研磨工程を省きコーティング加工で凌ぐ)更に強靭な糸が要求されます。そこで弊社では「PE」と呼ばれるポリエステル素材を使用した糸の開発により糸切れの軽減をすべく工夫しております。
第二章のテーマは房です。房の種類には菊梵天(菊房)といわれる刈込をした梵天、糸を編み込んだ釈迦凡天、そして、松房&新松房の撚り房、紐房、切房と大まかに分けて5種類あります。
菊梵天の制作は、房制作の中でも最も技術の要するもので、念珠屋としての生命です。弊社では伝統工法と機械製造法と2ウェイ運用で制作致しております。今後も製品及び修理に付きましても品質・納期・数量を合わせて全く問題ありませんのでご安心くださいませ。
次に釈迦凡天(弊社商標登録)ですが、この房の制作は、軸組みをした後、梵天部を付けるのが一般的な工程ですが、弊社の場合、軸が梵天内の構造に組み込まれ、軸が一旦その穴中に入ると抜けない仕組みに成っており、軸から釈迦凡天がすっぽり抜けることはございません。
撚り房は数多く流通している房ですが、現在、絶対量が不足していて、房の不足が問題に成っています。先ずこの撚り房を作る機械の製作者がいない事です。撚り返し機の機械は日本に中古機さえありません。既に機械メンテをする業者さえなく、弊社も大正時代のものをワンオフで部品調達し、稼働させているのが現状です。
多くは中国の撚り返し機で作られた『はかま』といわれる房部分を輸入し国内の内職で紙芯に巻き付け頭を付ける作業を行って作っています。
その内職も工賃は高いとは言えません。その上従事する方は高齢者が多く、熟練の経験がいる為、労働力の減少で将来に不安を感じる構造です。人絹といわれる安い商材は既に出来にくく、中国でも工賃上昇などにより職人が減っています。更には本絹といわれる糸の高騰で「正絹」房の値上がりがあります。
弊社では房の安定供給の為「シルキー」「ネオ・シルク」(商標登録申請中)と表記したポリエステル系の繊維の房を採用しています。正絹に比べて品質に於いて遜色はなく、むしろ高品質で高級感のある素材となっています。
紐房に関しても、純正絹は少なく品質価格的に見ましても、ポリエステル系の素材の方が耐久性があり堅牢度もよく、感触に関しましても正絹と云われるものにひけを取りません。
最後に切房ですが、弊社では強く撚りを掛けた特別の糸を使っています。切り房は撚りが戻ってしまうと悲惨なことに成りますので、従来の切り房は20年も前から廃止し「弥勒房」(弊社商標登録)と云う極細の撚り房を考案し使用致しております。現状では女性念珠の場合、細房が中心に成っていますので、髪の毛程の糸を特別撚りした繊細な製品に仕上げ、色のバリエーションも豊富にご用意致しております。
2021.12.31 UP DATE