山田和義の数珠の話

山田和義 数珠の話(7)梵天房の製作

 今回は梵天房についてご紹介申し上げますが、梵天房を作ることは数珠屋の基本中の基本です。

 作業の流れとしては、束ねた糸を、軸先となる糸で中心を括り付け、房となる両端を裁断し真丸く整える、という内容ですが、この一連の作業が難しく、幣社でも十人の職人のみが出来る仕事です。人数はおりますが、職人の体調などにより製品品質が微妙に異なることもあり、量産・均一生産が出来ませんので、弊社では自動機を開発し、梵天房も機械生産を行っています。

 機械生産の作業は、手作業の内容とほぼ同じです。量産が可能となるのはもちろん、機械でできるような、力が必要な作業や裁断の作業を機械が人の代わりにする事で、人の手が必要な箇所に職人の手を集中できるメリットもあります。

 では、機械生産による梵天房作りをご紹介しましょう。

 まずコンピューターで梵天のサイズに応じた量の糸を取る工程から始まります。梵天房を使用する数珠は、男性向け片手数珠22玉・18玉用、女性向け片手数珠用、真言宗用、法華用、等々で梵天サイズもさまざまです。

 糸取りをし、束ねた糸(数連分の梵天房が取れる長さがある)に、梵天房のサイズに合わせたリングを数連分 半自動機で通します。そして、指定の箇所へそれぞれの数珠の軸先を括り付けます。長さのある束ねた糸を1連ごとに分けるため、カットする自動機にかけます。荒カットし、結び目を隠すために湯熨斗(ゆのし)を行い、略完成品にします。この工程までで、80%が完成します。

 1連ごとに切り出された梵天房部分は、特殊な自動機カッターを使用して形を整えますが、最終は熟練の職人が仕上げをしています。機械生産ですと一日あたり、片手数珠で250連、本連数珠で130連の生産が可能です。欠点は、量産でないと当然ながら機械生産に向きません。最低50〜100連が必要です。更にラインで流すとなれば、本連数珠で常時500連以上が必要になります。

 ちなみに、職人の手作業も基本的な工程は同じです。梵天のサイズに合わせて糸取りした糸の束を数珠の軸先で括り、房の大きさに合わせ適度な長さにカットします。湯熨斗をしながら目指す形に整えた後、鋏みで粗かた球体を整え、さらに湯熨斗をして仕上げの鋏を入れ整えます。