山田和義の数珠の話
ネット市場では非常に安い価格の数珠が流通していますが、数珠玉の穴の中の磨き(研磨)にどれだけ手間を掛けるかで数珠の価格は大きく異なってきます。
玉の表面磨きは勿論ですが念珠業界では「磨き」と言えば穴の中の磨きが重要になります。レーザーもしくは「錐(きり)」であけられた穴の中は表面がヤスリのような状態になっていますので、どんな丈夫な糸でも切れてしまいます。
穴磨きと共に致しますのが穴口の磨きです。穴口が磨かれていませんと角張っている玉と玉がブツカリ鋭利な断面で摩擦を増長されることで簡単に糸が切れてしまいます。
玉の穴の中の研磨は、振動する容器であるバレルに入れた、玉・磨き砂・研磨剤(研磨する玉と同じ硬度で粉砕された細かい材料)により、共磨きすることで時間をかけて行います。この共磨きにより、数珠の表面、さらには穴口も穴中も磨かれます。
「錐」で穴をあける時には、玉の両側から錐で穴をあけることになります。両側から玉の中心に向かって穴をあけてゆくのですが、錐は完全に中央を貫通しませんので、中心部が細い状態で残るか貫通させていても、入口と出口で穴の大きさが異なり一定の太い糸が通らず、糸の揺れ幅で遊びが大きくなり、糸の疲労や摩擦係数を引き上げることとなり切れる原因となります。
この磨きを省略して、コーティングすることでコストを下げた玉もあります。穴磨きのコストは、原石から玉を作るコストに匹敵するくらい重大なコストとなっており、「安い数珠」と「妥当な価格の正規数珠」の違いはこうした「手間の違い」から生まれます。
2020.11.2 UP DATE